国立大学法人の人事評価制度(職能資格と職務分類) [用語解説(私見)]
1.人事評価制度を導入?
15年以上前から「目標管理制度」や「能力評価制度」が社会に広がり、リストラという「組織の再構築」の手段の一つとして利用されてきた。
国家公務員においても、平成11年3月の「公務員制度調査会答申」、平成12年5月の「人事評価研究会報告」、平成13年12月に「公務員制度改革大綱」が閣議決定された。確か、平成15年頃、国家公務員にも業績評価の導入が検討され行革室が音頭をとって法整備の一歩手前までいったことがある(この時は流れた)。
その後、平成16年12月に「今後の行政改革の方針」が閣議決定され、平成17年度中に第一次試行を開始、更に、2次試行等を経て、平成20年6月に国家公務員制度改革基本法が公布され、平成21年4月1日から人事評価制度が施行された。(詳細は、人事院・総務省ホームページ等を参照)
私は今、国家公務員では無いので、実際に制度が機能しているかどうかは分からないが、相当検討した後に導入したのは事実のようである。
一方、国立大学法人はどうだろうか?
流れからして、多くの国立大学法人にも評価制度は導入されていると思う。
今回は、国立大学法人における評価制度について、考察してみたい。
2.評価制度の必要性
国立大学法人では、国家公務員が平成21年度からの実施のため法人化された平成16年度時点では国家公務員で検討されていた資料を参考とするか、独自に民間のコンサルティング会社からの提案を鵜呑みにして導入する方法しかない。
以前、行革室主催の大手のコンサルティン会社による評価制度についての研修会に参加した際、講師が「いくらよい制度を提案しても、当該企業が本気になって自ら取り組まないと成功しない。最低でも3年必要であり。特に評価者研修に力を入れなければうまくいかない。」と話をしてくれたことが耳に残っている。
なんの為に評価制度を導入するのだろう?
大学の中期計画や年度計画・実行計画に記載するためなのか?
結果や効果ではなく、導入する(した)という事実に意味を求めているのか?
国家公務員の場合は、「これまで見られた採用試験の種類や年次等を重視した任用や給与処遇などの画一的な人事管理ではなく、職員個々の能力や実績等を把握して適材適所の人事配置やメリハリのある給与処遇を実現し、公務能率の一層の増進を図っていくことが必要(総務省ホームページより)」と試験、画一的人事管理、適材適所、給与処遇、公務能率の増進が目的のようである。
法人化前の話ではあるが、そもそも行政機関の行政事務官の給与法には級別資格基準表なるものも示されており、明らかに職能資格制度に基づく人事管理が行われていた。
職能資格制度とは、職務遂行能力に基づいて序列を決定することとしている。だが、そもそも能力の序列付けが難しく、役割や仕事の内容が明確にされていないため実質的な制度としては年功制と大差がない。(理論的には異なるが、給与法では在級年数に応じて上位級に昇格できる仕組みをとっており制度的に年数が能力の向上とみなされている。)
法人化前の国家公務員制度は、試験採用によりⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種と身分差別のごとく区別されており、これが運命(人生)の分かれ道とばかりに同じ年齢であっても採用試験区分が異なれば給与等様々な差が制度として定められている。
結局、仕事(ポスト)が人を創る(育てる)仕組みがあり、偉い人は偉く、普通の人は普通という、とてもシンプルな人事制度が官僚の世界である。
細かい話は、ノンキャリだった私としては、人ではなく試験区分により区別される仕組みがあまり好きではないので割愛します。
以上のことから、国立大学の職員は、職能資格制度により人事管理されていたと言っても言い過ぎではないと思います。
「成果主義」や「目標管理」とは、厚生労働省推奨のビジネス・キャリア検定試験の標準テキスト「人事・人材開発(中央能力職業開発協会 著)」によれば、「職務分類制度」による「評価制度」とされています。
つまり、成果主義や目標管理は、職務分類制度を補完する制度であって、職能資格制度に対する制度ではないと思います。
そもそも行政機関の仕事は、決められたルールにしたがってきちっとする。これが基本であり、誰がやっても同じ結果とならなければいけない仕事である。そのため、目標管理や成果主義を導入すること自体に無理があると思います。
だって、採用や異動してきた人は、与えられた仕事が得意であるかどうか向いているかどうかなどの個別能力による配置はあまり考慮されていないし、そんなデータを人事が持っているとも思えない(人の中身の情報(ウワサや人柄等)は持っているけどね)。
結局、導入してもうまく機能しないと思うし、実際やってて必要性を感じない。
3.打開策はないのか
国立大学法人職員に評価は不必要か?
頑張っている人を救い、頑張ってない人のモチベーションを揚げる。
そんな仕組みは必要だと思います。
私は、法人化後の人事制度を変えたくて社労士、キャリア・カウンセラーの資格を取得し、実際にボランティアとしてニート・フリターの支援をしています。その経験から、人財育成と業務への効率化を考えるとやはり個別にキャリア・カウンセリングを行い、個々の興味・関心の整理や能力(スキル)の測定を行い、その上で現状の職務分析を行う必要があると思います。最終目標としては、適切な人材の配置(マッチング)の適正化を実施することで個々のモチベーション・仕事の効率は飛躍的に向上すると思います。
つまり、個別のキャリア・カウンセリング自体が人事評価ということです。
ただ、法人化したことにより、職務の整理が大きな問題となります。行政機関だったため現状維持と運用で業務を処理していた職から企画立案力を必要とする職務に切り替えるのは容易ではないし、職務としての整理・認識ができるだろうか。
在職する職員が「変化への理解」と「職務とは何か」という整理ができなければ、どんな制度を創っても無駄だと思います。個別の能力の測定は可能でも、配置の部分が整理できなければモチベーションも効率も上がりません。
例えば、仕事をコア業務と非コア業務にわけて、ルーチン業務を契約職員の業務とし、コア業務として契約職員の人事管理を含め制度構築など企画立案業務を職務として整理できれば少し変わるかもしれません。
現状があまりにも変化しない。
法律から大学が作成した任意規定となったことから、ルールを守り職務を遂行してきた職員にはしんどくなってきたと思います。
15年以上前から「目標管理制度」や「能力評価制度」が社会に広がり、リストラという「組織の再構築」の手段の一つとして利用されてきた。
国家公務員においても、平成11年3月の「公務員制度調査会答申」、平成12年5月の「人事評価研究会報告」、平成13年12月に「公務員制度改革大綱」が閣議決定された。確か、平成15年頃、国家公務員にも業績評価の導入が検討され行革室が音頭をとって法整備の一歩手前までいったことがある(この時は流れた)。
その後、平成16年12月に「今後の行政改革の方針」が閣議決定され、平成17年度中に第一次試行を開始、更に、2次試行等を経て、平成20年6月に国家公務員制度改革基本法が公布され、平成21年4月1日から人事評価制度が施行された。(詳細は、人事院・総務省ホームページ等を参照)
私は今、国家公務員では無いので、実際に制度が機能しているかどうかは分からないが、相当検討した後に導入したのは事実のようである。
一方、国立大学法人はどうだろうか?
流れからして、多くの国立大学法人にも評価制度は導入されていると思う。
今回は、国立大学法人における評価制度について、考察してみたい。
2.評価制度の必要性
国立大学法人では、国家公務員が平成21年度からの実施のため法人化された平成16年度時点では国家公務員で検討されていた資料を参考とするか、独自に民間のコンサルティング会社からの提案を鵜呑みにして導入する方法しかない。
以前、行革室主催の大手のコンサルティン会社による評価制度についての研修会に参加した際、講師が「いくらよい制度を提案しても、当該企業が本気になって自ら取り組まないと成功しない。最低でも3年必要であり。特に評価者研修に力を入れなければうまくいかない。」と話をしてくれたことが耳に残っている。
なんの為に評価制度を導入するのだろう?
大学の中期計画や年度計画・実行計画に記載するためなのか?
結果や効果ではなく、導入する(した)という事実に意味を求めているのか?
国家公務員の場合は、「これまで見られた採用試験の種類や年次等を重視した任用や給与処遇などの画一的な人事管理ではなく、職員個々の能力や実績等を把握して適材適所の人事配置やメリハリのある給与処遇を実現し、公務能率の一層の増進を図っていくことが必要(総務省ホームページより)」と試験、画一的人事管理、適材適所、給与処遇、公務能率の増進が目的のようである。
法人化前の話ではあるが、そもそも行政機関の行政事務官の給与法には級別資格基準表なるものも示されており、明らかに職能資格制度に基づく人事管理が行われていた。
職能資格制度とは、職務遂行能力に基づいて序列を決定することとしている。だが、そもそも能力の序列付けが難しく、役割や仕事の内容が明確にされていないため実質的な制度としては年功制と大差がない。(理論的には異なるが、給与法では在級年数に応じて上位級に昇格できる仕組みをとっており制度的に年数が能力の向上とみなされている。)
法人化前の国家公務員制度は、試験採用によりⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種と身分差別のごとく区別されており、これが運命(人生)の分かれ道とばかりに同じ年齢であっても採用試験区分が異なれば給与等様々な差が制度として定められている。
結局、仕事(ポスト)が人を創る(育てる)仕組みがあり、偉い人は偉く、普通の人は普通という、とてもシンプルな人事制度が官僚の世界である。
細かい話は、ノンキャリだった私としては、人ではなく試験区分により区別される仕組みがあまり好きではないので割愛します。
以上のことから、国立大学の職員は、職能資格制度により人事管理されていたと言っても言い過ぎではないと思います。
「成果主義」や「目標管理」とは、厚生労働省推奨のビジネス・キャリア検定試験の標準テキスト「人事・人材開発(中央能力職業開発協会 著)」によれば、「職務分類制度」による「評価制度」とされています。
つまり、成果主義や目標管理は、職務分類制度を補完する制度であって、職能資格制度に対する制度ではないと思います。
そもそも行政機関の仕事は、決められたルールにしたがってきちっとする。これが基本であり、誰がやっても同じ結果とならなければいけない仕事である。そのため、目標管理や成果主義を導入すること自体に無理があると思います。
だって、採用や異動してきた人は、与えられた仕事が得意であるかどうか向いているかどうかなどの個別能力による配置はあまり考慮されていないし、そんなデータを人事が持っているとも思えない(人の中身の情報(ウワサや人柄等)は持っているけどね)。
結局、導入してもうまく機能しないと思うし、実際やってて必要性を感じない。
3.打開策はないのか
国立大学法人職員に評価は不必要か?
頑張っている人を救い、頑張ってない人のモチベーションを揚げる。
そんな仕組みは必要だと思います。
私は、法人化後の人事制度を変えたくて社労士、キャリア・カウンセラーの資格を取得し、実際にボランティアとしてニート・フリターの支援をしています。その経験から、人財育成と業務への効率化を考えるとやはり個別にキャリア・カウンセリングを行い、個々の興味・関心の整理や能力(スキル)の測定を行い、その上で現状の職務分析を行う必要があると思います。最終目標としては、適切な人材の配置(マッチング)の適正化を実施することで個々のモチベーション・仕事の効率は飛躍的に向上すると思います。
つまり、個別のキャリア・カウンセリング自体が人事評価ということです。
ただ、法人化したことにより、職務の整理が大きな問題となります。行政機関だったため現状維持と運用で業務を処理していた職から企画立案力を必要とする職務に切り替えるのは容易ではないし、職務としての整理・認識ができるだろうか。
在職する職員が「変化への理解」と「職務とは何か」という整理ができなければ、どんな制度を創っても無駄だと思います。個別の能力の測定は可能でも、配置の部分が整理できなければモチベーションも効率も上がりません。
例えば、仕事をコア業務と非コア業務にわけて、ルーチン業務を契約職員の業務とし、コア業務として契約職員の人事管理を含め制度構築など企画立案業務を職務として整理できれば少し変わるかもしれません。
現状があまりにも変化しない。
法律から大学が作成した任意規定となったことから、ルールを守り職務を遂行してきた職員にはしんどくなってきたと思います。
国家公務員と民間の労働条件の違い [用語解説(私見)]
日本国憲法第27条第2項には、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」とされ、日本では法律によって労働条件を定めることとされています。
一般的には、「労働基準法」が該当すると思います。
一方、国家公務員は、憲法第73条第1項第3号において、「法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。」と内閣が国家公務員の事務をとりまとめると定められています。
更に、国家公務員法第1条第2項に「この法律は、もつぱら日本国憲法第七十三条 にいう官吏に関する事務を掌理する基準を定めるものである。」とされ、憲法に規定されている事務について定められています。
さて、元に戻って労働条件についてですが、この国家公務員法が結構くせもので、この法律の附則第十六条において「労働組合法、労働関係調整法、労働基準法、船員法、最低賃金法、じん肺法、労働安全衛生法及び船員災害防止活動の促進に関する法律並びにこれらの法律に基いて発せられる命令は、第二条の一般職に属する職員には、これを適用しない。」とされて、民間とは異なる法的扱いとなっているのです。
民間の場合は、労働基準法において、労働時間や休暇、給与の支払い、使用者の義務などを示され、違反すると罰則(刑事罰もあり)が適用されています。
国家公務員の場合は、給与は「一般職の職員の給与に関する法律」、労働時間は、「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」と結構細分化されています。
これに対し、労働基準法(第89条)には、10人以上の労働者を雇用する使用者は、「就業規則」により「労働条件」を定めなさいと記されており、労働基準法は、あくまでも最低ルールで細かい内容は、「使用者がきっちり決めて雇用してね。」となるのです。
また、国家公務員の場合は、基本は全国一律なので、法律やその関連規定等により細かく労働条件が定められています。
つまりは、日本では労働条件については、全て法律で定めることになっているのですが、国家公務員と民間労働者では、その適用法令が異なっているわけですね。
この違いは大きな問題であり、平成16年4月の国立大学法人化によって職員に非常に影響を受けることとなっています。
一般的には、「労働基準法」が該当すると思います。
一方、国家公務員は、憲法第73条第1項第3号において、「法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。」と内閣が国家公務員の事務をとりまとめると定められています。
更に、国家公務員法第1条第2項に「この法律は、もつぱら日本国憲法第七十三条 にいう官吏に関する事務を掌理する基準を定めるものである。」とされ、憲法に規定されている事務について定められています。
さて、元に戻って労働条件についてですが、この国家公務員法が結構くせもので、この法律の附則第十六条において「労働組合法、労働関係調整法、労働基準法、船員法、最低賃金法、じん肺法、労働安全衛生法及び船員災害防止活動の促進に関する法律並びにこれらの法律に基いて発せられる命令は、第二条の一般職に属する職員には、これを適用しない。」とされて、民間とは異なる法的扱いとなっているのです。
民間の場合は、労働基準法において、労働時間や休暇、給与の支払い、使用者の義務などを示され、違反すると罰則(刑事罰もあり)が適用されています。
国家公務員の場合は、給与は「一般職の職員の給与に関する法律」、労働時間は、「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」と結構細分化されています。
これに対し、労働基準法(第89条)には、10人以上の労働者を雇用する使用者は、「就業規則」により「労働条件」を定めなさいと記されており、労働基準法は、あくまでも最低ルールで細かい内容は、「使用者がきっちり決めて雇用してね。」となるのです。
また、国家公務員の場合は、基本は全国一律なので、法律やその関連規定等により細かく労働条件が定められています。
つまりは、日本では労働条件については、全て法律で定めることになっているのですが、国家公務員と民間労働者では、その適用法令が異なっているわけですね。
この違いは大きな問題であり、平成16年4月の国立大学法人化によって職員に非常に影響を受けることとなっています。